日日是好日の雑記

色々と自分が面白いと思えるものを雑記として

【大学教員】のおすすめ漫画2 古典漫画(後編)と”すかんちのThank you”

前回の「大学教員が教えたいマンガシリーズ」ではいきなり古典文学でしたが,実は長すぎたので二つに分けました。こちらが後編(その2)です。

hati-d.hatenablog.com

f:id:Hati_D:20210221233803j:plain

前回は,aikoさんの名曲「バニラ香」から始めさせていただきました。今回は皆さんもご存知の過激なパフォーマンスを繰り広げた伝説のロックバンド「すかんち」です。

中性的な容姿に関わらずぶっ飛んだパファーマンスとコーラスワーク、最高です。「恋のマジックポーション」や「恋するマリールー」などが一般的には有名ですが,4枚目のアルバム「オペラ」に収録されている「Thank you」という名曲があります。同棲していた彼女と別れる日を歌ったものです。この切ない歌詞への応答としてローリーさんのブライアン・メイ風の空元気な明るい感じの曲調をぶつけてくる感じ、弱ります。

古典文学の大恋愛絵巻とローリーさんが生み出す恋の歌,世界にありがとうと言いたい。正気です。

 

 

▼ 更科日記・蜻蛉日記 (電子書籍なし)

更科(さらしな)日記と蜻蛉(かげろう)日記が一緒になっているマンガです。

 更級日記・蜻蛉日記

 

 > Amazonで買う。 > 楽天で買う。

更科日記は,菅原孝標娘(すがはらのたかすえのむすめ)が作者です。 JR五井駅(千葉県市原市)の駅前に帽子かぶって立っています。自分の過去を振り返った自伝です。文才があったんでしょうね。

更級日記は,田舎に住んでいた作者が「なんか都に源氏物語っていう面白い小説がある」って聞いたんだけど!もう今すぐにでも行って読みたい!という日記です。作者が13歳の時に,父の転勤によって念願の京入り!乳母や継母との涙の別れもありますが,作者本人にとってはうれしくて仕方がなかったでしょうね。道中も源氏物語で頭がいっぱいになっていたに違いありません。(ここで登場する乳母とも継母とも仲良しです。源氏物語の存在を教えてくれたのは継母です!)

京に到着後にすぐさま源氏物語を拝読します。物語の中で「浮舟」という人物に出会ってしまいます。このイケメン二人に言い寄られる「浮舟」に憧れ,当時の女性たちとはだいぶ違う人生を送ります。橘俊通(夫)に対する気持ちの変化が注目するところです。

更級日記の魅力は,源氏物語に憧れるひとりの女性の自伝ということでしょうか。成功者や偉人などの自伝はたくさんある中,1000年前の普通の女性(貴族ではあります)のお話です。

f:id:Hati_D:20210221230130j:plain

蜻蛉日記は,藤原道綱母(ふじはらのみちつなのはは)が作者です。更級日記の作者である藤原孝標娘にとって伯母さんの関係です。文才一家だったことがわかります。

蜻蛉日記は大陸文化を踏まえ,独自の文化を見直そうと「かな文字」の使用が広まる過程で書かれた作品と言われています。ご存知の通り,丸みをおびた「かな文字」は女性のイメージを表現できる文字として,女流日記に続々と使われます。その最初の作品が「蜻蛉日記」と言われています。

藤原道綱母は才色兼備であり,その中でも熱心に口説いてきた藤原兼家の奥さんとなります。源氏物語伊勢物語から予想できるように,藤原兼家もどうしようもない奴だったようで,蜻蛉日記の冒頭は下記のように始まります。

かくありし時を過ぎて 世の中にいとものはかとなく とにもかくにもつかで よに経ふ人ありけり

(訳:時間はどんどん過ぎて行って、世の中は頼りないし拠り所もないし,私はただただ普通にくらすだけ)

っと、夫?や世間?への不満から始まります・・・。

 

蜻蛉日記には,男女間の嫉妬やすれ違いの愛や苦悩について、「夫を許せんけど,やっぱり好きだわ」という負のオーラを放ちながら描かれています。ゴッー

平安時代は一夫多妻制の時代ですが,夫の兼家さんは「妻がこどもを生むと他の女性のところに通いたくなる」という病気をもっています。というのも作者である藤原道綱母も浮気相手でした・・・。そういった複雑な心境をたぐいまれなる文才で綴っています。

蜻蛉日記を読むことで、平安時代の結婚の様子がわかります。現在の結婚の常識は通じません。当時の結婚生活は夫婦がともに暮らすという発想はなく「通い婚」とか「妻問婚」であり,奥様の実家に夫が通って愛をはぐくむというのが「普通」な形でした。「夜に行って朝に帰る」というのがルールです。奥様にとっては,夫の通う頻度で愛を測ります。

そして,藤原道綱母(右大将道綱母)の歌も「小倉百人一首」に選歌されています。

嘆きつつ ひとり寝る夜の あくる間は いかに久しき ものとかは知る

(訳:嘆きながら一人で寝る夜がどんだけ長いか、わかりますか?)

 

藤原兼家さん!令和の時代まで悪名が届いています。

 

▼ 古事記 と 日本書紀

古事記日本書紀は,同時期に編纂された歴史書(付録:神話)です。古事記日本書紀の大きな違いは,その編纂目的にあります。

古事記は国内向けに作られた歴史書であり,全体の3分の1が神話の話で構成されています。天皇という存在を神格化することで(世をおさめ?),彼らが日本を統治する存在であることを国内にアピールする意味合いがあったといわれています。書体は、一見「漢文?」と思わせる「和化漢文」で書かれています。

日本書紀は,大陸に向けた天皇支配の正当性をあいーるするために編纂された歴史書と言われています。そのため,大陸(唐)との意思疎通を行うための共通言語である「漢文」で書かれています。古事記のエンターテイメント性がある物語に比べて記録的な表現が多いです。また,古事記と違って日本書紀では全30巻のうち神話の記述は2巻程度しかありません。あてられた割合に差はあるものの、どちらも「日本神話」を大切にしていることがわかります。

なお,両歴史書を合わせて「記紀」と言われます。「記」と「紀」の違いに気を付けましょう。

 古事記 (久松文雄(画))

 

 > Kindleで読む。 > ebookJapanで読む。

 > コミックシーモアで読む。 > Kinoppyで読む。

天地の始まりである「神代」から初代天皇神武天皇から第33代推古天皇(最初の女性天皇) までを書いています。日本書紀の記録っぽい文章とは異なり,100首以上の和歌が文章中に綴られたエンターテイメント性に富んだ実にドラマチックな「歴史書」です。日本書紀同様に、「国生み」や「神生み」があったり,イザナギノミコトやイザナミノミコトが出てきたり,死者の国「黄泉の国」など、いろいろなどこかで聞いたことがある言葉が沢山出てきます。

須佐之男命(スサノオノミコト)が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の尾から回収した「草那藝之大刀(クサナギノタチ)」,別名天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)と言いますが「三種の神器」のひとつで,雨や雲とゆかりのある剣として知られています。

令和天皇陛下即位の際にも,早朝から雨が降り,即位の礼のハイライトである「正殿の儀」には雨が弱まり青空がのぞいた時には,須佐之男命(スサノオノミコト)のお姉さんである天岩戸に閉じこもって太陽が出ずに皆を困らせた天照大御神(アマテラスオオカミ)を思い出させる様子でTwitterトレンドに上ったことも覚えています。

 

天照大御神の孫である「ニニギ」が三種の神器とともに九州の高千穂に降り立ち「天孫降臨」となるわけです。この「ニニギ」の孫が初代天皇「新武天皇」ですね。

この「ニニギ」という神がもつ別名

天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命(あめにぎしくににぎしあまつひこひこほのににぎのみこと)

「長っ!」と思うのも教養のひとつです。(この長さは軽々しく名を呼ぶこともできませんね。)

これだけでも、「あれ?面白いんじゃないの?」というのが古事記です。

 

 天智と天武-新説・日本書紀-

 

 > Kindleで読む。 > eBookJapanで読む。

 > Rentaで読む。 > コミックシーモアで読む。

古事記同様に、「神代」から第41代の持統天皇(三番目の女性天皇)までの,各天皇陛下がおこなったことについて年代順に記載されています。どこかで聞いたことがあるかと思いますが,「漢書」や「百済本記」「魏志倭人伝」などが引用された歴史書です。

 

世界的に教養として自国の神話を学ぶことがステータスとしてあります。私自身も大学生まで 知らなかったものの「母国の神話を知っているのが普通」という常識を学ぶ機会があり,初手としてマンガで学んだ次第です。世界各国には,たくさんの神話があります。日本の神話を学んだあとに比較材料として学ぶのも面白いと思います。

ギリシャ神話,ローマ神話北欧神話メソポタミア神話,エジプト神話,ケルト神話,マヤ神話、ソロアスター神話,聖書などなど。RPGのゲームで出てくる武器等々、とにかくたくさん出てくるので飽きないと個人的には思っています。 

古典文学について

古典文学ということもありネタバレしました。この内容を漫画であらかじめ読んでおくことが,受験勉強の対策にもなると思います。また,歴史書である「記紀」を読んでおくことで,実は旅行が楽しくなると思っています。皆さんも,室町や戦国時代など好きな歴史時代があるかと思いますが,歴史で知っているものが博物館等で飾られているとひときわ感動します。知っていると知っていないとで、視野に違いが出るということです。例えば,佐賀県唐津市にある唐津城には「信長を傷つけた槍(安田作兵衛)」が飾られています。この槍の真偽は別にして、古典を学ぶということにはいろいろな意味があります。あるいは,九州辺りに旅行行くと古事記日本書紀での話が沢山あります。

 

社会人になり様々な経験を積んだうえで,この投稿がきっかけで久しぶりに古典文学を読み返してみたいと思っていただければ嬉しい限りです。長文となりましたので,古典編は二つに分けました。

自己紹介1に記載のとおり、ど理系ですので間違いがありましたら大目に見てください。最新研究まではチェックしきれていないので大学生の頃の知識で止まってます。

関連記事

hati-d.hatenablog.com