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【大学教員】のおすすめ漫画4 ムーンライトマイル (MOONLIGHT MILE)

宇宙を題材にした漫画や映画ってなぜか見ちゃいませんか。皆さんはどう?

最近の映画でいえば,「インターステラー」。重力波と親子愛,モールス信号で私も時空のはざま・・・ネタバレになるので,この辺りにします。Amazonプライムで無料で観れます。

 

マンガといえば,映画化された「宇宙兄弟 」や,「ヴィンランド・サガ 」の作者としても有名な幸村誠さんの「プラネテス(全4巻・完結) 」もおすすめ宇宙漫画なんですが,aikoさんと同じくらい敬愛している太田垣康男さんの「Moonlight mile」を紹介したいと思います。ざっくりいうと,宇宙(月面)開発の漫画です。

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4人に1人が死ぬといわれる冬季エベレストに挑戦する日本人の「猿渡吾郎」とアメリカ人の「ロストマン」。登頂に成功して地球ではそれ以上の高みがなくなった二人が頂上で観たのが「国際宇宙ステーション」です。吾郎もロストマンも「白息」というよりはむしろ体内の熱い気持ちが「火気」となって大量に口からドバドバ出ます。そして,宇宙が未踏峰の新たな目的地となり,二人は別々の手段で宇宙に行くための活動を始めます。かっこええ。。。

この漫画のしょっぱなから興味深いところは,なんといっても宇宙開拓へのアプローチです。アメリカ人であるロストマンは海軍に所属しエースパイロットとして操縦技術を磨きながら宇宙を目指します。このロストマンのアプローチは,宇宙人がゲッソーみたいで思わず笑ってしまったウィル・スミス主演の「インデペンデンス・デイ」でもみられた軍隊からのNASAアプローチです。

一方,日本人である吾郎は土建屋アプローチです。吾郎は,将来の宇宙開拓を見通して,科学者や学者の次に必要になるであろう宇宙における建築スペシャリストとなり,宇宙を目指します。この着眼点は非常に興味深く,大学教員としても「思わず,なるほどね~」っと納得してしまいました(見ればわかる)。

 

▼ 現実世界のお話し

また,「Moonlight Mile」において,人類が宇宙を目指す理由も至極納得するものです。日本では少子高齢化により2053年には1億人を割る見通しですが,一方で世界人口は100億人を突破することが予想されています(総務省統計局)。この世界の人口を支えるには地球上の資源(エネルギー)だけでは供給が追い付かないのは何となく想像できるかと思います。このエネルギーの問題の解決策のひとつとして核融合があります。核融合が実現すれば,我々人類は核廃棄物の処理に悩むことも化石燃料を燃やすこともなく,安定したエネルギー源を手に入れられます。(※一部の核融合は廃棄物出ます!)

2020年8月より日本・EUアメリカ・ロシア・韓国・中国・インドの7ヵ国合同で運営している超々大型国家プロジェクトである「ITER(イータ);international Thermonuclear Experimental Reactor (ラテン語で「」という意味)」の建設サイトで,「核融合炉の組み立て開始」が報告されました。ワクワクしませんか。私はすんごくワクワクします。

www.fusion.qst.go.jp

 

核融合は,原子同士が融合してより重たい原子になる反応であり,融合の際に大きなエネルギーを生み出します。この原子同士を融合する条件や安定化させる技術がなかなか難しいのですが,この融合させる原子の候補(軽く・融合させるエネルギーが低い)として,重水素(D)・三重水素(トリチウム(T))・ヘリウム3の三つがあります。地球上にはほとんど存在しない「ヘリウム3」ですが,アプロ計画の際に月に大量のヘリウム3があることがわかっています(※「月の裏側」)。この月にあるヘリウム3をめぐって,先に挙げたITERのグループがしのぎを実際に削っています

例えば,中国の「嫦娥計画(じょうがけいかく)」では,2016年に打ち上げた「嫦娥4号」が世界で初めて月の【裏側】に着陸したとして世界中で報道されました。なお,「嫦娥5号」では,月面の岩石や土壌の採取に成功するだけではなく,アメリカに続いて2番目の国旗を掲げています(2020年12月5日BBC Newsより)。後述しますが,この「嫦娥計画」は2003年3月1日に正式に開始され,2007年に「嫦娥1号」が打ち上げに成功しています。

www.technologyreview.jp

また,インド宇宙研究機関(ISRO)は2019年に相次いで会見を開き,独自の宇宙ステーション計画や2022年までの有人宇宙飛行を目指すことを発表しています。(月面着陸には2019年9月の時点では失敗の報道)

www.thehindu.com

この両国(中国とインド)は,「Moonlight Mile」においてもかなり重要です。インド関連においては,こんなことが起きないように祈るばかりです・・・。

 

さて,まだまだ脱線しますが月面での核融合は,基本コンセプトとして月で発電を行い,その電気を地球に送ります(送電)。電気を蓄えた電池を沢山積んだスペースシャトルが地球に降り立つわけではなく,長距離で送電を行うワイヤレス給電(マイクロ波方式)で地上に電気を送ります。昨今,マイクロ波方式ではなく電磁誘導方式(IH家電)ですが,皆さんも「接触型の携帯充電器」を見たことがあるかと思います(置くだけで充電できるので便利です。)。これも技術の進歩によるものです。

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っと,まー令和の時代まで大きく脱線してしまいました

が,この漫画の世界と現実世界との差がない「リアル」さが科学者である私としても非常に興味深く拝読させていただいている要因となっています。また,太田垣さんの作品にみられる宇宙というテーマだけではなく,人種差別・戦争・貧困・政治など,人間のありのままが描かれているところも魅力のひとつです。

 

そして驚くことに,原作者はおらずに太田垣康男さんだけで,この漫画を描いていることに驚きます。さらには,この漫画が開始されたのは西暦2000年(単行本は2001年5月)です。前述のとおり,中国が2003年に宇宙計画を発表し2007年に「ヘリウム3を資源として月を目指す」ことが発表されています。作者の世界情勢の読みが確かであったことが読み取れると同時に,宇宙開発の背景を知れば知るほど「リアルさ」に驚かざる負えない漫画となっています。こういった世界情勢の読みを答え合わせするだけでも面白い作品かもしれません。そう考えると,子どもには建築関係の様々な資格を取らせておいた方がが良いような気がしてきます(笑)。

 

単行本の4巻のP65で「猿渡五郎」も「ロストマン」も宇宙に到達します。ここからが、すごく面白ぃ。学生に貸すときも「4巻」まで貸すようにしています。なぜ,4巻かというと??宇宙に上がるまでのぐちゃぐちゃした政治などで読むのをやめてしまう人が散見されますが,

4巻のP203の「3・2・1・・・ドロップ」まで読むと

あっという間に最新刊 まで読み切ってしまいます

まさに,To the Moon🚀です。

 

 MOONLIGHT MILE(hontoで読む)  太田垣康男(著)

  

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▼ スピンオフ作品

「意外に知られていない!」というか私自身も先日まで知らなかったので早速購入しました。月面に人類が住み始めた後の刑事もの。人間の決断力に焦点を置いた漫画家かな?とにかく,明るい!明るい!漫画です。

 ディアーナ&アルテミス

   

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